保護者向けの話
余程暇そうに見えるのだろう。子どもたちから「校長先生ってどんな仕事してるの?」と聴かれることがある。中には校長室に入ってくるなり「こんなフカフカの椅子に座れるなら、私も校長先生にでもなってもいいかな~」などと軽口をたたく子もいて楽しい。
子どもたちにそのように言われても明確に答えることが難しい。子どもたちから見れば、朝は掃除をしているし、授業中にフラッと教室に入ってきてニコニコしてるし、昼休みは低学年の子のブランコを押してるし…とても「仕事してる」という感じには見えないとも一人納得する。
子どもたちや職員の表情は、私にとってのいわば羅針盤である。表情に曇りがある、下を向いている子がいる、声が小さい・・などは、何らかのテコ入れを考えるサインでもある。校内をぶらぶらと歩き回っているのは、実はそういったものを見ているんだよ・・と言いたいところだが、そんなことを子どもたちに言っても分からないかなと思い、言葉を濁している。
昔、先輩の校長から「なぜ、校長には校長室が与えられているのか。それは、校長には先を見越してしっかりした判断を行うために、客観的なデータをもとに一人でじっくり考えることが必要だからだ。」と言われたことがある。今年度は日々の感染症対策はもとより、そのことに付随する学校行事のあり方や人権感覚を育てる工夫、学力保障の問題等、なかなか考えることも多く、これまた楽しい。
先日の静岡新聞に「修学旅行の見直し」と題して社説が掲載されていた。この最後の部分に「限られた時間の中で粘り強く工夫を重ね、児童生徒にとって今年ならではの一生の思い出となるような行事を目指してほしい」と書かれていた。これはまさに校長への叱咤激励とありがたく読ませていただいた。本校は、小規模校であるため感染症対策を講じやすいという利点があるし、幸い職員一人ひとりの意識と技量は高い。私が校長室で考える様々な思いを、教頭をはじめ職員が具体案にしてくれる。具体案はPTA役員や保護者の皆様にもお諮りをするつもりでいるので、忌憚のないご意見をいただきたい。
昨日の校長会では、市教育委員会の担当者から磐田市のGIGAスクール構想に基づく施策についての説明があった。今年度中には4年以上の子ども及び教職員に、来年度の1学期中を目途に低学年の子どもにタブレット1台ずつ配備するとのことである。子どもが発表したり話し合ったりする際に大きな力になるだろうし、先生と子どもの課題のやり取りもたやすくなるだろう。もちろん、家庭と学校をつなぐことにも力を発揮するだろう。どのように授業や教育活動で活用していくかじっくりと考え、工夫を重ねたい。乞うご期待を!
子どもたちへのお話
みなさん、改めましておはようございます。全員が笑顔でここに集まることができたことがまずもって嬉しいことです。21日間といつもより少し短い夏休みでしたが、自分を高める事ができましたか?
私は夏休みを利用して、長野県上田市というところにある「無言館」という美術館に行ってきました。その名前の通り、ひっそりとした場所に建つ静かな雰囲気の美術館でした。ここには、画家になることを夢見ながら、戦場に駆り出され生きて帰ることができなかった若者たちの遺した作品や手紙などを展示しています。
戦時中とは思えないような穏やかな街の風景画だったり、愛する人の人物画だったりと、平和への憧れや「もっと生きていたい」という叫びまでも感じるものばかりでした。改めて殺してもいい無駄な命なんて一つとしてないと思いましたし、みんなが大人になっても戦争のない平和な世の中を作っていってほしいと強く思いました。
2学期に向けてのお話に入る前に一言お礼を言わせてください。終業式後、私のところに何枚かの「かがやきカード」が届けられました。その内容は大まかにいえば、「毎朝、校門の坂を箒で掃いてくれている」「おはようと元気よく言ったらおはようと返してくれる」「いつも授業を見に来てくれる」といった内容でした。私の方がみんなから元気をもらっているのに、こんなふうに「ありがとう」と言ってもらえるとやっぱり嬉しいし元気がでます。この場を借りて皆さんに私から「ありがとう」と伝えたいと思います。
さて、2学期のキーワードは「自分たちで」だということは、1学期の終業式の中でも伝えました。毎日の授業はもちろんのこと、運動会やファミリーウォークラリーをはじめ多くの行事で、いろいろな人と支え合い助け合い協力し合いながら取り組むことが多くなります。先生たちを頼らずみんなでいろいろなものを創り上げていってほしいなと思っています。
そこで、みんなに願う姿として、2つのことを挙げておきたいと思います。
一つ目は「どうせ・・」って言わないということです。やりもしないうちから「どうせ、やってもできないもん」「どうせ、言っても反対されるだけだもん」などと言ってほしくないなあと思っています。みんなで協力するためには、一人一人がちゃんとした考えをもってそれを発言することが大事なことだし、「どうせ」で諦めてしまうのは成長のチャンスもみすみす潰してしまう残念なことだと思うのです。ほんの少しの勇気を出して行動してみる、発言してみるようにしてほしいです。
二つ目は「面白がって聴く」ということです。面白がると言っても、なにも馬鹿にしたり冷やかしたりしましょうなどと言っているのではありません。むしろその逆です。クラスやファミリーグループのみんなの考えにしっかりと耳を傾けてみましょう。そのうえで自分と違った考え方に出会ったら「そんなふうに考えられるなんてすごいね。」「そんな考えは思いつかなかったな。面白いね。」などと言ってあげましょう。私も、毎日の授業参観の中でぼそっと「すごいね」「面白いね」ということがありますが、その子の考えに対して尊敬の念をもって面白がっていると思ってください。
昨年度の2学期始業式ではツリーハウスのことをお話ししました。今から15~6年前の皆さんの先輩が「学校にツリーハウスを作りたい」と提案したことからそのプロジェクトは始まり、2年がかりの大事業になったという旨のことを紹介しました。
先日の新聞に、ある学校では、運動会でお揃いのTシャツを着るのが恒例だそうですが、今年はコロナの関係でそのお金を集めることができなくなったそうです。そこで、製作費を集めようと子どもたちだけで資源回収をやりたいと校長先生に直談判して実現したという記事も載っていました。
さあ、みんなはどんなことを「やりたい」って言ってくれるのでしょう。そしてどんなことを自分たちの力で実現してくれるのでしょう。私はワクワクするような気持ちでみんなのことを見ています。これで始業式での私の話を終わります。
いつも、式の入場曲と退場曲は、6年生児童がピアノ演奏等を行ってくれるのですが、今日の退場曲は写真のとおり6年生4名が鍵盤ハーモニカとリコーダーによる「ラバーズコンチェルト」を演奏してくれました。式後のホッと和む瞬間でした。
保護者向けの話
前回の「遠き日の運動会での思い出(校長室から)」の中で、「子どもたちの着想や発想を面白がる」という言葉を書きました。この「面白がる」という言葉は、私たち職員にとっても、そして子どもたちにとっても大事な言葉になると、私は考えています。
先日、ある新聞のコラムに「日本の先生はゴールから私たちを見ている。アメリカの先生はスタートから私たちを見ている。」という内容が掲載されていました。日本の先生は、「よくできました」「がんばったね」とゴール地点から手招きしている、それに比べてアメリカの先生は「こんなことができるなんて羨ましい」「その考えは私には思いつかなかった、すごい」とスタート地点から子どもたちの背中に向かって声援を送っているというのです。
私は、どちらが良くてどちらが悪いかといった二者択一のような考え方をするつもりはありませんが、スタートとゴールの両方から子どもたちを見守るという視点は必要だなと改めて考えさせられました。
先日の「教師の夏休み…(校長室から)」の中で、夏休みに入ってすぐの校内研修で「教師が指示する場面をさらに厳選したい」との反省が先生たちから出されたことを紹介しました。教師が先頭に立って子どもたちを指導している間は、子どもは次々に与えられるものに対応しようと頑張るのみです。子ども自身の発想や工夫が生かされる余地はありませんし、教師側はまさにゴール地点で、できた子どもをほめるしかありません。アメリカのようにスタート地点で子どもの着想や発想を面白がるためには、先述の反省のとおり、教師が指示する場面を厳選して子どもが活動する時間を多く取るしかありません。だから、「面白がる」ことは2学期以降の授業改善の大きな視点かなと思っています。
加えて、「面白がる」ことのもう一つの効用を述べておくと、教師も子どもも笑顔が増えるということです。黒板の前に立って先生が一生懸命に指導する光景を思い浮かべていただくと分かる通り、どうしても眉間にしわが寄ってしまいます。子どもたちも聴いているだけですので笑顔になれるはずもありません。笑顔が増えると、脳も活性化し学習内容も定着しやすいと考えられます。
ここまでは、私たち職員が「面白がる」ことが必要だという話をしましたが、子どもたちにとってもこの視点は必要になってくると思っています。
2学期は「自分たちで」をキーワードに、学級やファミリグループでお互いに高め合い支え合う様々な取組を通じて、豊かな人間関係を構築できるようにしていきます。
その際に「面白がる」姿勢は必要です。お互いの考えを聴こうともしないし、聴いたとしても賛同することもないような雰囲気のなかで、より良い人間関係が築けるはずもありません。まずは子どもたち同士でじっくり話を聴きあう、その中でお互いの発想の違いを「面白がる」ような雰囲気ができればいいなと思っています。「その考え、面白いね。」「そんなことを思いつくなんてすごいね。」なんて言われたら、話す方も気分が良いですから・・。
教師向けの話
あと2か月もすると、秋の運動会を開催することになる。秋に運動会を開催するのは、本校では平成18年度以降となるため、なんと13年ぶりのこととなる。感染症対策をしっかり講じた上で、異学年交流の充実・たくましさや達成感を持たせるといった当初の目的を果たせるような運動会にしたいなあと思っている。
さて、運動会の頃になると、私には忘れられない、ある苦い思い出がよみがえってくる。
あれは、二十数年前、ある小学校で6年生の学級担任をしていた頃のことである。この学校では、学年別学級対抗リレーというものを運動会の花形種目として取り入れていた。その中でも6年生の学級対抗リレーといえば、運動会の中でも最も盛り上がる種目の一つであり、学級の中でも代表メンバーの選出、走る順番をどうするか、バトンパスを含めた練習をいつどのようにやるかなど、ずいぶんの時間をかけて準備を行っていた。
それとは別に、職員室では、6年生の学級対抗リレーに職員チームを編成して一緒に走ろうという話が盛り上がっていた。
「佐伯さんもメンバーになって一緒に走らない?」
「子どもと一緒に走るのなんていやですよ、みんなで応援すればいいじゃないですか。」
「先生が走ると子どもたちや観客も盛り上がるよ。だから走ろうよ。」
「子どもたちから主役の座を奪うみたいなことできませんよ。ぼくは出ませんよ。」
‥などという会話を職員室でしたことを今でも覚えている。
運動会は子どもたちが主役でなければならない、子どもたちの輝きや成長、そういったものを保護者や地域の方々に見てもらう機会なのだ。そんな晴れ舞台に教師が出ていってどうするのだ!と思っていたが、その頃の私は、そんな思いをうまく他の教師に伝えることもできず、単に職員室の和を乱すだけの存在としか映らなかっただろうと思う。
結局、私を除いた若手職員で構成された職員チームが6年生の学級対抗リレーの中で走ることとなった。
間もなくして事件は起きた。2走目か3走目だったか覚えていないが、ある若手職員が、なんと、うちのクラスの代表選手と接触したのだ。本来、職員チームは最も外側のレーンを走ることになっていたのだが、あろうことか、その職員は6年生に負けるのはいやだと本気を出し、内側のレーンに入り込んできたのだ。うちのクラスの子どもは転んでけがをするし、クラス自体の順位も最下位になるしで最悪の結果になった。私がその教師に「なんてことをしてくれたんだ!」と怒鳴ってもあとの祭りである。
こんなことがあって、よけいに「学校は子どもが主役である」「子どもが主役をはっている表舞台で教師がしゃしゃり出てきてはいけない」との思いを強くもつようになった。
だから、立場が変わった今も、本校の職員には次のようにお願いしようと思っている。
「先生たちには、運動会前日までの準備の段階では精いっぱい汗をかいてほしい。どんな種目にするのか子どもたちと真剣に議論してほしいし、勝つための練習を子どもたちと一緒にやってほしい。さらに、安全対策を含め指導すべきことはしっかり指導してほしい。でも、運動会当日は子どもと一緒に踊ったり走ったりするなど表舞台に立たないでほしい。子どもたちが全力を出し切れるために裏方に徹してほしいし、子どもたちの頑張りや成長を目の奥にしっかり焼き付けてほしい。先生たちには、子ども一人ひとりをしっかり見ていてほしいし、子どもたちの着想や発想を面白がってほしい。」と。
さあ、10月24日の大舞台に向けて、いよいよ本格的な準備が始まる。コロナは大きな心配のタネではあるが、保護者や地域の皆様には、子どもたちの個々の頑張りに加えて、ファミリーグループの結束にぜひ期待していてほしい。
保護者向けの話
夏休みももうすぐ1週間が過ぎようとしています。毎日、暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。これをご覧いただいている方全てに暑中お見舞いを申し上げます。
さて、教師の働き方については、マスコミでもいろいろ言われておりますが、そんな中でも「先生はいっぱい夏休みがあっていいね」と、未だに教師も子どもと同様に夏休みを取っているように思われている方もいるようです。
私は、若い頃から教師の夏休みは、プロ野球選手のキャンプや自主トレと似たところがあるなと思ってきました。夏休みの期間中に様々な体験を重ねた子どもたちと2学期に久しぶりに会うと、一回り成長したように感じることがよくあります。そんな時、教師である自分が成長していないと、一回り大きくなった子どもの前に堂々と立てない気がするのです。だから、子どもが学校に来ない夏休み期間は、教師としての自身を高める時期としては絶好の機会なのです。
今年は夏休みが短くなったため、全職員で集まり研修する時間は少なくなりました。夏休みに入った8月5日の午前中に、全職員で1学期の授業を反省し、2学期以降取り組むべき課題を明確にしました。先生たちからは、「教師が指示する場面をさらに厳選したい」「振り返りの時間を確保し、子ども自身が学習に関するメタ認知ができるようにしていきたい」などの意見が出されました。今後、全職員で集まれるのは、始業式前の1~2日しかありません。ここでは、2学期に向けて共通理解しておくべき事項を総ざらいすることが主な目的になります。こうした全職員で集まり研修等を行うことを「キャンプ」と見立てれば、あとはすべて「自主トレ」になります。どのように限られた時間を過ごすかはそれぞれの先生に任される部分になります。
私は、終業式の際に子どもたちには「何か一つでいいから続けてください」と投げかけてあります。「継続は力なり」の言葉通り、何かをやり遂げることで自信になると思うのです。
さらに終業式後の全職員打ち合わせの際には、「心や体をリフレッシュすることはもとより、読書等で教養を高めること、教材研究を兼ねて実際に視察することなど、自身を高める期間にしてください」と話をしました。
学校評価アンケートとして、ある保護者の方からは「働き方改革と言われていますが、先生方の気持ちのゆとりがなければ子どもたちに良い教育ができないと思います。ハード面を整えることは目に見えて分かりやすいですが、ソフト面の整備も大切だと思います」との意見をいただきました。まさにその通りだと感じました。
2学期の始業式の折には、私たちは気力・体力・知力ともに充実した状態で子どもたちの前に立ちたいと考えています。これまで、学校の方に事故や病気に関する連絡は入っていませんが、子どもたちにとっても有意義な21日間を過ごしてほしいなと心から願っています。
保護者向けの話
昨日、保護者の皆様等を対象に向陽学府小中一貫教育に関するアンケート調査を依頼するメールを送らせていただきました。なぜ、この時期にアンケート調査を実施するのか、このアンケート調査の結果をどのように活用するのかなど、解説文の中で十分にお伝えできなかったことを、書いてみようと思います。
1 これまで向陽学府小中一貫教育で進めてきたことについて
向陽学府では、これまでも3年間の期間を区切って、小中一貫教育のあり方を模索してきました。第2期向陽学府コスモスプラン(平成30年度から令和2年度)では、「つながり」をキーワードとして様々な取組を行ってきました。
「人とのつながり」では、行事を通して小学校間のつながりや小中学校間の交流を行いました。「地域とのつながり」では、CSD(コミュニティ・スクール・ディレクター)を中心に積極的に総合的な学習の時間に地域人材の協力を取り入れた授業を実践しました。「教師のつながり」では、異校種の教育課程や学校文化を理解するための授業参観や、小学校と中学校における相互の乗り入れ授業を行ってきました。これらの取組は、子どもたちにとっても教師にとっても大きな成果を得ることができたため、次年度以降も充実した取組を継続していきたいと考えています。
2 来年度以降の向陽学府小中一貫教育の方向性について
一方で、「小中一貫した教育課程の編成・実施に関する手引(平成28年12月26日 文部科学省編)」には、小中一貫教育の中核とも言える事柄として、9年間を見通した学校教育目標を設定することと、系統性・連続性を強化したカリキュラムを編成・実施することと示されています。
そこで、第3期コスモスプラン(令和3年度から令和5年度)では、向陽学府内小・中学校がともに目指す子ども像を設定・共有するとともに、その実現を図るため、9年間を見通した小中一貫カリキュラムを編成していきたいと考えています。
3 向陽学府内小・中学校がともに目指す子ども像を設定・共有することについて
これまでも、各学校において、小学校6年間若しくは中学校3年間を通してどのような子どもの姿を目指すのかを「学校教育目標」という形で示しています。しかしながら、上記に示したとおり、最終的には本学府の子どもたちの多くは向陽中学校を卒業するということを考えると、小・中学校で別々の教育目標を立てるのではなく、向笠小・大藤小・岩田小・向陽中の4校が目指す子ども像を一つにした方がその教育効果は高いと考えました。
ついては、令和3年度以降の学府教育目標は、9年間をかけて目指す子ども像として示すこととし、この目標は向陽中学校の学校教育目標にもなります。ただし、ここで設定した学府教育目標が小学校段階では高度であると判断した場合は、9年間の途中段階として、小学校6年間で目指す子ども像を示すこととします。したがって、この目標は大藤小学校・向笠小学校・岩田小学校共通の学校教育目標になります。
4 どのように目指す子ども像を設定するのか
「目指す子ども像」は、校長の一存で設定されるわけではありません。国や県・市の動向、児童生徒の実態等を含め、様々な要素を考慮して、慎重に決めていきます。
(1)新学習指導要領・磐田市教育委員会方針を受けて
新学習指導要領において求められている資質能力は、生きて働く「知識・技能」・未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力」・学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」です。こういった資質能力を子どもたちが身につけるためには、教師から与えられた学習課題を受け身的に取り組むのでなく、主体的・対話的・深い学びの環境を整える必要があります。
さらに磐田市教育委員会は、磐田市の教育について、大きな変動が予想される未来に立ち向かっていける「たくましい磐田人(いわたびと)」を育成するために、上記に示した「学力の保障」は当然のことながら、「ふるさとを愛する優しさ、未来をひらく強さ、豊かで愛情溢れる心」を育てると述べている。本学府としても、磐田市の教育の目指す方向性と歩みを同じにしていかねばならないと考えています。
(2)本学府の実態
学府の子どもたちは、人の温もりのある恵まれた環境の中で育っています。多世代同居の家庭も比較的多く、地域住民同士のつながりも強いことが伺えます。そのため子どもたちは、小さい頃より大人からの愛情を受けて育っており、概して情緒が安定し素直で優しい子どもが多いと言えます。さらに地域行事の中に子どもたちが活躍できる機会が多いのも、本学府の強みと言えます。
一方で、学府内小・中学校はいずれも小規模校の部類に属し、教師や大人の目が行き届き、手をかけやすい環境にあります。そのため子ども同士の人間関係において、自身の意思を表現すること、友達とのトラブルに柔軟に対処すること、友達同士で相談し企画運営することなどに慣れていない子どもも多いと言えます。
(3)保護者や地域の方々の思いを
上記(1)(2)を考慮して、これまでも各校で目指す子ども像(つけたい力)を明確にしたうえで学校教育目標を設定しています。現在、各校で考えている目指す子ども像(つけたい力)を分析すると、アンケート調査にも書かせていただいたとおり、①主体性 ②たくましさ ③こころざし ④地域貢献 ⑤やさしさ の5つにまとめることができます。
現在も、この5つの項目については、どの学校でも重要なものであると捉えていますし、今後も変わるものではありません。しかしながら、各校でどの項目に力点を置いているかということになると微妙に違いが見られます。例えば、向笠小の学校教育目標「瞳を輝かせ 最後までやり遂げる子」を見てみると、「瞳を輝かせ」には①主体性や⑤やさしさが色濃くなっていますし、「最後までやり遂げる子」には②たくましさを育てたいとの思いが強く出されています。では、本校では③こころざし ④地域貢献 は育てていないのかと言えば、これまでのホームページや学校・学年だより等でお伝えしているとおり、幾つかの活動を通して育成しようと取り組んでいます。
他の3校についても、本校と同じように5つのものをどれも大事だと考えていますが、特に力点を置くものはどれかとなると多少の違いがあります。
そこで、4校の学校教育目標を一つにそろえるにあたって、特に力点を置くものをどれにしようかと検討する必要があります。その際に、保護者や地域の皆様からの御意見も参考にしたいと考えています。
5 おわりに
今回のアンケート結果については、学府だよりや各校ホームページに掲載するとともに、3月開催予定の学府運営協議会の場において、この結果をふまえた学府経営構想をご説明させていただく予定でいます。
子どもたちへのお話
1学期最後のこの日(8月4日)、梅雨明け後の青空が広がる中、体育館は気温も上昇しましたが、感染症や熱中症の予防策も取りながら、短時間での終業式を行いました。
各学年代表児童から、1学期に頑張ったことと2学期に取り組みたいことをそれぞれ発表しました。縄跳びや水泳等の運動を頑張った子、算数等を頑張った子、リーダーとして責任をもって行動することやファミリー活動で下級生に優しくすることを頑張った子など様々でしたが、どの子もしっかりと前を向いて自信をもって発表できました。
続いて、校長から以下の話をしました。
今年度は、感染症対策のための休校期間がありましたので、1学期は56日の授業日を過ごしたことになります。先ほど、各学年代表の6名が1学期に頑張ったことを発表してくれました。どの子の発表もすばらしかったです。
1学期は「自分から」をキーワードに多くのことを頑張りました。1年生は、入学式の頃と比べると学校にも慣れ、とても活発にいろいろなことに挑戦することができました。6年生はファミリー活動や委員会活動をはじめ多くの場面でリーダーとしていろいろなことを考え、下級生を引っ張ってくれました。どの学年の子も、表情がたくましくなってきました。
2学期は「自分たちで」をキーワードにしていきたいと考えています。2学期の全校行事として、10月の運動会、11月のファミリーウォークラリー、12月には持久走記録会を予定しています。既に運動会は各学級から代表児童が集まりプロジェクトを作って話し合いを始めましたし、ウォークラリーについては6年生がバスで地域探訪をして候補地を絞ったうえで実際に電話連絡を取って見学可能かを調べています。このように下準備は進んでいますので、2学期に入ったら自分たちでより楽しくなるように「やりたい」ことをいっぱいアイディアを出して全力で取り組んでくれるといいなと思っています。
さて、明日から21日間の夏休みに入ります。私からみなさんに3つのことを宿題としてお話しします。昨年度同様、この3つは絶対にやってほしいことです。
一つ目は「命を守る」ということです。交通事故、水の事故など絶対に遭わないこと。熱中症にも気をつけてください。
二つ目は「つづける」ことです。何でもいい、一つでいいから、自分を伸ばすためにやり続けてみてください(ちなみに私は、この夏休みは毎日読書をすることと、朝晩のウォーキングを続けたいと思っています)。
三つ目は「地域のために」できることをするということです。地域の人に会ったらあいさつするのでもいい、近所に落ちているゴミを見かけたら拾うのでもいい、みんながそうすることで、地域の人は嬉しいし、明るい気持ちになります。
では、2学期の始業式(8月26日)に、元気な笑顔で会えることを楽しみにしています。
式後に、生徒指導主任から「自分の命を自分で守る」ために気を付けることとして「じこ」「コロナ」「夏の暑さ」と、子どもにも覚えやすいように話をしました。
最後になりましたが、子どもたちはほとんど欠席もなく、元気で笑顔で登校することができました。これもひとえに、保護者や地域の皆様の支えがあったからこそと心から思っております。この場を借りて、お礼を申し上げます。2学期もよろしくお願いします。
保護者向けの話
学校評価(中間)アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。向笠小の教育に大きな期待を寄せていただいていることが分かり、身の引き締まる思いをしました。詳細につきましては、後日お知らせすることとして、アンケート結果から私が強く感じたことのみ書かせていただきます。
私は、職員に対して「すべては子ども理解から始まること、そして学ぶことや学びの場である学校が楽しいことが基本である」と常に言い続けてきました。「子どもたちは、学校が楽しいと思っている」では、子どもは約94%、保護者は約97%が肯定的な回答をしています。さらに、「向笠小の教師は、子どものことを理解して指導にあたっている」では、子ども・保護者ともに約96%が肯定的な回答をしています。これらを見ると、ホッと一安心というところですが、逆に数パーセントの子どもは、学校が楽しいと感じておらず、理解されていると感じられないということです。これら一人ひとりの子どもの気持ちにさらに寄り添う必要も強く感じます。
文章記述する意見欄には、「補充・発展学習」に関して実に多くの方に意見を寄せていただきました。保護者の皆様に高い関心を持っていただいていることも分かり嬉しく感じました。
この時間を本年度から日課表に位置付けた思いは、「日課表の工夫 その3「補充・発展学習の時間」について」(校長室から)の中で述べたとおりです。ここに書いた思いは今も全く変わりはありません。ただし今年度始めたばかりの取組ですので、今後も試行錯誤しながら子どもたちにとってさらに実りある時間に育てていきたいと考えています。
中には「やりたいと思う子が好きなことをただ楽しんでいるいるだけではないのか」「新型コロナウイルス感染症の影響で不足した時間数を補う時間ではないのか」といった意見もありました。
まず、この時間は、新型コロナウイルス感染症とはまったく関連のないものであり、来年度以降も充実発展させていきたい取組の一つであるということはご理解いただきたいと思います。さらに全員参加ではないので、授業時数としてのカウントもしないということになります。
さらに、子どもの自主性に任せ、やりたい子が残るというやり方について今後も継続したいとも思っています。「やりたくもないのに残される」「勉強させられる」などと受け身な気持ちで参加しても効果は得られないと考えているからです。これまでの取組を見ても、ホームページでお伝えしている通り、授業とはまた違った学習への取組の様子が見られているのも確かです。
ただし、さらに「精度を高める」ことは必要だと強く感じているのも確かです。「補充・発展学習」は、あくまで各教科等の授業と深く関連しているものです。授業の振り返りを行う中で、一人ひとりの子どもが、何が分かって何が分からなかったのかを、自分自身で認識できることが大事なのです(このことは、新学習指導要領でも強く求められていることです)。それが分かれば、「ここが分からなかったから、今度の補充・発展学習のときに先生に聞いてみよう(補充)」「授業で学習したことをもっと深く調べてみたくなったから、今度の補充・発展学習のときに調べてみよう(発展)」と新たなめあてがもてるようになるはずです。こういった「振り返り」⇒「自分を見つめる」⇒「新たなめあてを持つ」の思考の流れができるようになることを「精度を高める」といったのです。これだけのことを子どもができるようになるには、もう少し時間が必要です。温かく見守っていただけると嬉しいです。
なお、学校全体としての方向性は以上となりますが、実際に各学年でどのような内容を学習するのかといったことについては、各学級担任と学級の子どもたちとのやり取りの中で決められるものです。2学期以降は、学年だよりに「補充・発展学習」における各学級担任としての思いや取組内容についても掲載する予定ですので、そちらをご覧いただき、ご意見などいただければありがたいです。
保護者向けの話
天気もすっきりとしない中、この連休中には、磐田市内で新型コロナウイルス感染者が発生したとの報道も出されました。さらに市長メッセージとして、「①正確な情報に基づいた冷静な対応をお願いしたいということ、②近隣であっても感染が拡大している地域への不要不急の外出は我慢するとともに感染防止対策を改めてお願いしたいということ、③個人の尊厳を損なうような行動や誹謗中傷に繋がることがないこと」の3点が発せられました。
本校では、5月18日(月)からの学校再開準備週間を含め、現在までほとんど欠席者もなく登校できています。日に日に子どもたちの笑顔も増え、60分授業や補充・発展学習、ファミリータイムなども思った以上に順調に進み、子どもたちは概して意欲をもって一つ一つのことに取り組んでいます。私の切なる願いは、今後もそうした子どもたちの笑顔を途切れさせないことだけです。
そのために、学校においてはこれまで通り感染症対策を進めていきますので、保護者の皆様におかれましても、夏休み期間中においても感染が拡大している地域への不要不急の外出等は避けていただけますようご協力をお願いします。子どもたちを一人たりとも感染させないよう、連携した取組をお願いしたいと思っています。
さらに、2学期には、運動会(10月24日)、ファミリーウォークラリー(11月21日)、持久走記録会(12月3日)といった全校行事に加え、5年生対象の観音山自然体験教室(11月11日~13日)があります。3学期には6年生対象の修学旅行(3月2日~3日)も予定しています。
これまで何度も書いてきましたように、子どもたちの自主性・自治性・たくましさに加え、地域等への貢献の姿勢を育てるうえで、こういった行事をとおした体験活動はなくてはならないものであると考えており、予定通り実施していきたいというのが私の切なる思いです。
ただし、安全性の担保と、子どもたちや保護者の皆さんの安心を得られなければ、実施は難しいとも考えています。そこで、これらの大きな行事を実施するに際して、磐田市から出される対応基準等を参考にすることはもとより、事前にPTA3役を含め、関係役員等には学校の考え等をお諮りして実施の可否並びに実施方法について決定していきたいと考えています。
最後になりますが、これ以上、市内における感染者が増えることがないことを強く願うとともに、どのような状況になろうとも、市長メッセージにもあるように、犯人捜しや誹謗中傷等のない冷静かつ温かな対応ができる向笠小学校でありたいと思っています。
保護者向けの話
ウチの学校の先生たちは、私から見ても真摯に子どもたちに向き合っていると思う。こういった先生たちの姿を見ていて、私が感じる「教師の仕事とは…」を連休初日のゆっくりした時間に書いてみたくなった。
教師の仕事は、一言で言えば「裏方」である。
子どもが学校で活動をしている、いわゆる授業であったり学校行事であったりするときは、教師はどこにいるのか分からない、いたと思ったらやけに暇そうにしていた・・ぐらいがちょうどいいと思っている。
基本的に、子どものみならず人間は、昨日より今日が良くなっていたい、成長していたいと願う動物だと私は思っている。子どもは、学校という無限の可能性を秘めた場所で、何かを懸命に探究し、自分なりに表現しようとする。そういった懸命な活動を、教師は邪魔してはいけないと思ってきた。
では、教師は何をするのか。子どもの言動に隠れた真実の思いを探るのである、まるで探偵のように。そして機会をみて、その思いを表舞台に登場させるべくコーディネートするのである。一方、全体が進もうとする方向とずれた方向に進もうとしている子どもがいたら、場合によっては一旦表舞台から退場させ個別に指導・支援を行う。あとは子どもたちの反応を楽しんで見ていれば良いのである。時に大人が考え付かないような面白い発想が飛び出すことがあり、そんな時は、教師は心からその発想に感動し、子どもと一緒に楽しめばいいと思う。
「裏方」なので、授業や行事に至るまでの事前準備は念入りに行う。どんな言葉を教師が投げかけると最も子どもが良い反応を示すだろうか、今日の授業ではA君が「わかんな~い」と言い出すだろうからこれを準備しておこうか、とか様々な妄想をするのだ。この妄想がまた楽しいのだ。頭の中ではすでに子どもたちが実に楽しそうに授業に熱中している姿を想像しているのである。でも、本番の授業ではこういった妄想どおりに進むことは少ない。だから、授業後に1人反省会を行う。「どこが悪かった」「今度は違った切り込み方をしてみようか」など。この反省会が教師の力量を伸ばすとも考えている。
一方、運動会等の行事でも同じことが言える。準備は、子どもたちと長い期間をかけて行う。行事が子どもたちにとって自分事になるまでには、それ相応の期間と地道な取組が必要なのである。中でも子どもたちとの話し合い活動を通していろいろなことを決めていく、意思統一していく過程ではついつい教師は上から口を挟みたくなる。しかし、そこはぐっと我慢して「建設的な議論」の方法を教え支援していくのである。こういったことができれば、本番は表舞台としての教師の出番はない。まさに安全を確保すべく、目と頭だけが絶えず動いていることとなる。
こんなふうに考えているので、私は学校の先生として勤めている時間を「仕事をしている」という感覚で捉えたことはあまりない。「あまり」と言ったのは、リスクマネジメントに関して言えばこれは仕事だと思って緊張感をもっているからである。
体の力を抜いて、ゆったりとした気持ちで、子どもの心の声を聴く・・そして子どもの反応を楽しむ、これが私がこれまで教師として歩んできた中で大事にしている姿勢である。