遠き日の運動会での思い出(校長室から)
2020年8月20日 10時15分 あと2か月もすると、秋の運動会を開催することになる。秋に運動会を開催するのは、本校では平成18年度以降となるため、なんと13年ぶりのこととなる。感染症対策をしっかり講じた上で、異学年交流の充実・たくましさや達成感を持たせるといった当初の目的を果たせるような運動会にしたいなあと思っている。
さて、運動会の頃になると、私には忘れられない、ある苦い思い出がよみがえってくる。
あれは、二十数年前、ある小学校で6年生の学級担任をしていた頃のことである。この学校では、学年別学級対抗リレーというものを運動会の花形種目として取り入れていた。その中でも6年生の学級対抗リレーといえば、運動会の中でも最も盛り上がる種目の一つであり、学級の中でも代表メンバーの選出、走る順番をどうするか、バトンパスを含めた練習をいつどのようにやるかなど、ずいぶんの時間をかけて準備を行っていた。
それとは別に、職員室では、6年生の学級対抗リレーに職員チームを編成して一緒に走ろうという話が盛り上がっていた。
「佐伯さんもメンバーになって一緒に走らない?」
「子どもと一緒に走るのなんていやですよ、みんなで応援すればいいじゃないですか。」
「先生が走ると子どもたちや観客も盛り上がるよ。だから走ろうよ。」
「子どもたちから主役の座を奪うみたいなことできませんよ。ぼくは出ませんよ。」
‥などという会話を職員室でしたことを今でも覚えている。
運動会は子どもたちが主役でなければならない、子どもたちの輝きや成長、そういったものを保護者や地域の方々に見てもらう機会なのだ。そんな晴れ舞台に教師が出ていってどうするのだ!と思っていたが、その頃の私は、そんな思いをうまく他の教師に伝えることもできず、単に職員室の和を乱すだけの存在としか映らなかっただろうと思う。
結局、私を除いた若手職員で構成された職員チームが6年生の学級対抗リレーの中で走ることとなった。
間もなくして事件は起きた。2走目か3走目だったか覚えていないが、ある若手職員が、なんと、うちのクラスの代表選手と接触したのだ。本来、職員チームは最も外側のレーンを走ることになっていたのだが、あろうことか、その職員は6年生に負けるのはいやだと本気を出し、内側のレーンに入り込んできたのだ。うちのクラスの子どもは転んでけがをするし、クラス自体の順位も最下位になるしで最悪の結果になった。私がその教師に「なんてことをしてくれたんだ!」と怒鳴ってもあとの祭りである。
こんなことがあって、よけいに「学校は子どもが主役である」「子どもが主役をはっている表舞台で教師がしゃしゃり出てきてはいけない」との思いを強くもつようになった。
だから、立場が変わった今も、本校の職員には次のようにお願いしようと思っている。
「先生たちには、運動会前日までの準備の段階では精いっぱい汗をかいてほしい。どんな種目にするのか子どもたちと真剣に議論してほしいし、勝つための練習を子どもたちと一緒にやってほしい。さらに、安全対策を含め指導すべきことはしっかり指導してほしい。でも、運動会当日は子どもと一緒に踊ったり走ったりするなど表舞台に立たないでほしい。子どもたちが全力を出し切れるために裏方に徹してほしいし、子どもたちの頑張りや成長を目の奥にしっかり焼き付けてほしい。先生たちには、子ども一人ひとりをしっかり見ていてほしいし、子どもたちの着想や発想を面白がってほしい。」と。
さあ、10月24日の大舞台に向けて、いよいよ本格的な準備が始まる。コロナは大きな心配のタネではあるが、保護者や地域の皆様には、子どもたちの個々の頑張りに加えて、ファミリーグループの結束にぜひ期待していてほしい。