卒業証書授与式での校長式辞
2021年3月23日 08時48分 向笠小学校令和二年度卒業生として本校を巣立つ二十三名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。本日の卒業証書授与式は、感染症予防対策を講じながらも、できうる限り心のこもった式にしたいと考えております。そのような中、参与兼中央図書館長様、本校PTA三役並びに保護者の方々にはご臨席を賜り、誠にありがとうございます。卒業生、教職員を代表して、心からお礼申し上げます。
只今、皆さんにお渡ししました卒業証書は、六年間いろいろな困難を乗り越え、頑張ってきた証です。特にこの一年はコロナ禍において私たちは先が見えない不安な日々を過ごし、皆さんにもいろいろと不便を強いてしまったところがあるのではないかと感じています。しかし、そのような中で皆さんを見ていてはっきりとわかったことが幾つかあります。
一つ目は、下級生に対しての皆さんの「優しさ」です。今年度は、運動会やウォークラリー等の学校行事を始め、週二回のファミリータイムなど異学年での交流活動を充実させました。六年生である皆さんにはこれまで以上にリーダーとしての責任がかかってくるわけですが、皆さんは下級生に対して実にきめ細やかな心遣いを見せてくれました。様々な行事等がスムーズに進んだのは紛れもなく皆さんのおかげですし、皆さんからの「優しさのバトン」は確実に在校生に受け継がれていくと思います。
二つ目は、皆さんの「しなやかさ」です。今年の修学旅行のしおりの表紙には「一泊二日と見せかけて、実は二回に渡る壮大な日帰り旅行」の副題がおどっていました。何度も何度も計画変更を余儀なくされ、最後は宿泊も無しになってしまいました。このような事態になってもくさることなく、今できることを話し合い、柔軟に前向きに対応しようとした行動は立派でしたし、先程紹介した副題を最初に見せてもらったときは、こういう状況でさえも明るくしなやかに乗り越えようとする姿に感動したのを覚えています。
さて、これからの人生は、未知のものであり、望むことや願うことの達成は簡単なことではないかもしれません。時としておそれを感じたり、途方に暮れてしまったりすることもあるかもしれません。だからこそ、皆さんには「さらなる強さ」を求めたいと思います。禅の言葉で「独来独去(ひとりきたり ひとりさりて) 無一随者(いちも したがうもの なし)」という言葉があるそうです。人間生まれるときも死ぬときも一人きり、誰もついてきてはくれないという意味ですが、これからの厳しい人生、いずれお父さんやお母さんも一緒について来てくださることができない、自分だけで歩く日が必ず来ます。そういう中にあっても勇気をもって、ほんの小さな一歩でいいから歩み続ける人であってほしいと願っています。しかし、かく言う私も弱虫でした。高校生の頃に仲の良い友達に「学校の先生になりたい」と打ち明けたら、「お前なぞ、なれるわけない」と笑われたこともあったほどです。その時に諦めることなく、悔しい思いを忘れず「今に見てろ」と頑張ったことや、さらには教師になった後もあの時の悔しさを忘れず歯を食いしばったことで、何とか続けてこられたと思っています。本日の卒業式のしおりに、東井義雄さんの詩を載せました。その詩にあるように、まさに皆さんはそれぞれがそれぞれの光をいただいてまばたきをし続ける「星」です。ぜひ、この先の人生においても「人には優しく、そしてしなやかに、強く生き抜く」ことで、輝き続ける星であってほしいと願うばかりです。
最後になりましたが、保護者の皆様におかれましては、高い所からではございますが、心よりお子様のご卒業をお祝い申し上げると共に、これまでの向笠小学校に対する温かくそして熱いご支援・ご協力に感謝し、心から厚く御礼申し上げます。結びになりますが、卒業生全員の前途に幸多かれとお祈りし、式辞といたします。