校長室から

子どもたちが落ち着いて生活できるように~③言葉を整える

2020年9月17日 16時40分
保護者向けの話

 子どもたちが落ち着いて学習・生活に取り組める環境づくりの工夫として、これまで「生活リズムを整える」「場を整える」について書いてきました。今日は「言葉を整える」について書いてみようと思います。

 前回も書きましたが、これまでの教職経験から考えると、学校の「荒れ」は、まず教室や校内が何となく雑然とする「場が荒れる」ことから始まり、次第に「てめえ、このやろう」をはじめ場をわきまえた話し方ではない、ひそひそ話が多いなど「言葉が荒れる」状態に移ってきます。さらに進行すると授業妨害や暴力、器物損壊など「行動が荒れる」状態になります。こうした負の連鎖を断ち切るためにも、「荒れ」の反対の状態を意図的に作っていく必要があるのです。

 ここまで読まれた方は「言葉が荒れるのは、気持ちが荒れているからじゃないの?」と感じた方もいるかもしれません。しかし、最初は軽い気持ちで汚い言葉を使ったり、人を傷つける言葉を言ってみたりするのです。自分で言った言葉を改めて自分で聴くことによって、気持ちは次第に荒れてくるのです。概して言葉が先で、気持ちの荒れはその後です。だからこそ、意識して美しい日本語を使う必要があるのです。


 東京大学大学院教授で脳研究の第一人者でもある池谷 裕二氏は、著書の中で、楽しいから笑顔になるのではなく笑顔を作るから楽しい気持ちになる。自信があるから姿勢が良いのでなく、姿勢を正せば自信が持てる と書かれています。つまり、「まずは形から」で幸福になれるというのです。

 学校でも、教師自身が「てめえ、このやろう」など汚い言葉や人を傷つける言葉を使うのは問題外、大声で感情的に叱ることもやめようと話しています。オランダイエナプラン教育の創始者であるペーターセンは、子ども同士、子どもと大人が対話することを重視する一方、言葉の氾濫が学習活動の目的を不明瞭にすることを避けねばならないと述べています。


 本校の子どもたちを見ると、総じてお互いを気遣った優しい言葉・美しい日本語を遣っているように感じています。きっと、それぞれの子どもが育つ各家庭において、親が率先して美しい日本語で会話されているからだろうとも感じています。