授業と評価はどのように変わるのか(校長室から)
2020年7月3日 14時27分1 学校が担う役割の変化
(1) 教育基本法により、義務教育の目的は、①個人の能力の伸長 ②自立的に生きる基礎 ③国家社会の形成者として必要とされる基本的資質を養う とされていて、これについては以前から何ら変わるものではありません。つまり、子ども自身の可能性を伸ばすとともに、個々の良さを社会に役立てられる人間に・・といったところだと思います。
(2) かつて学校というところは、社会に役立つための最新の知識や技術を教えてくれるところでした。しかし、技術革新が進み、世の中が急激に変化する今、身につけた知識や技術は明日になればもう古くなっているなんてこともあるわけです。だから、学校は子どもたちに知識や技術を身につけるだけでは足らなくなり、新しい知識等を自ら得るための過程を学ぶ場所としての役割が浮上してきました。
2 学習指導要領の大きな変化
学校が、どの教科のどのような内容をどの程度の時間学習するのかについては、きちんと法律(学校教育法施行規則)で規定されています。学習指導要領には、法律に基づき、上記のことをさらに細かく規定していますが、これまでは「教師が子どもたちに何を指導するのか」という観点で記載されていました。しかし、本年度から本格実施された学習指導要領では、学習者主体で様々なものが規定されており、なかでも初めて「子どもたちがどのように学ぶのか」といった学習過程にまで踏み込んだ内容になっています。このことからも、学校は知識や技術を教えるところから、学び方を子どもたち自身が身につけていく場所へと、その役割の変化が伺えます。
3 主体的・対話的で深い学びへ
かつては、「チョークとトーク」で一斉に講義する授業スタイルの先生も多くいましたが、今や時代遅れと言わざるを得ません。子どもたちは教師から講義を受けることで知識は身につくかもしれませんが、上述のとおり講義形式の授業ばかりだと新しい知識を子ども自ら得るための経験を奪ってしまうことにもなりかねません。
下の写真は、この日(7月3日)の6年生の算数の授業風景です。めあてを解決するために、小グループで意見を出し合い一つの考えにまとめていく、さらにほかのグループの子どもたちに分かってもらうための論理的な説明方法を考えます。こういったことは、教師が全部説明してしまうことはたやすいことですが、今はこういった子どもたち同士で学び合うような学習過程をすごく大事にしています。
4 評価の観点も変わります
今回の学習指導要領において、上述のとおり子ども自ら新たな知識や技術を得るための学習過程を重視していることもあり、観点別評価においてもこういった学習過程での子どもの表れをしっかり評価するとともに、子どもの変容を通して教師自身の指導のあり方も評価しなさいと規定されています。
かつての「関心・意欲・態度」を評価する場合、ともすれば挙手の回数やノートの丁寧さなど一過性の表れで良い評価をすることがありました。しかし今回の「主体的に学習に取り組む態度」の評価は違います。例えば、あるめあてに対して子ども自身で予想します。その後、この予想が合っているのかどうかを調べて結果を出すという学習に移ります。何を調べたらよいかを考え、図鑑やインターネットを見て、友達にも聴いてみる、こういった粘り強さがあるかどうかを見ます。さらに友達同士で話し合って建設的に考えを高め合うことができるか、結果がうまく出ない場合にどうすればいいのだろうかと考えてみることができるか、など自らの学習を調整することができるかも見ます。
したがって、新たな知識や技術が身につくまで粘り強く自ら学習に取り組んだかどうかを見ていますので、これまでのように発表は頑張ったけど知識は身についていないなどの場合は「主体的に学習に取り組む態度」は良い評価にはならないということになります。
5 おわりに
今回は、「子どもたち自身の学び方」に着目した新学習指導要領の改訂についてお話ししましたが、実はもう一つ、大きな改訂点があるのです。それは、「情報活用能力」を「学習の基盤となる資質・能力」として位置づけたことです。文部科学省のある方は、すべての学問の基礎である「読み・書き・算盤」に「情報活用能力」を付け加えたと言っても過言ではないとも説明しています。今後、デジタルデバイスを家庭でも学校でも「勉強道具」として使いこなすということが求められます。本校においても、子どもたちが主体的に学べるように、こういったツールを効果的に使えるよう研修を進めていきます。