校長室から

「自分を愛する心」~会礼での校長の話

2021年2月3日 14時48分
子どもたちへのお話

 まだまだ寒いですが、今日から「立春」ということで、暦の上では春ということになります。ちなみに、季節の変わり目には病気になりやすいのは、体や家の中に鬼が入るからだと考えられており、季節の区切りの前日を「節分」と呼び、豆まきや恵方巻を食べるなどの行事が行われてきました。

 さて、今日の会礼は、私の好きな詩を一遍紹介します。
 この詩は、吉野弘さんという詩人が、自身の娘さんに宛てた手紙のような詩です。2つのものをあげたいと言っています。まさに皆さんを目の前にすると、私も同じような思いになります。まずは聴いてください。

奈々子に  吉野 弘

赤い林檎の頬をして
眠っている 奈々子。

お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いがふえた。

唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。

お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。

ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。

自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。

自分があるとき
他人があり
世界がある。

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた。
苦労は
今は
お前にあげられない。

お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。

 吉野さんは、「健康」と「自分を愛する心」をあげたいと言っていますね。
皆さんは、今は親や先生たちから愛され、大事にされ、何なら健康についても気を遣ってもらっています。しかし、いつまでも親や先生は一緒にはいられない、いつかは必ず自分の2本の足だけで世の中を歩く日が来るのです。

 世の中には、テレビやゲームをはじめとする楽しいことやものであふれていますし、逆に自分にとって苦しいことや悩ましいこともいっぱい目の前にせまってくることでしょう。そういう時に、いかに自分を愛することができるかが大切です。

 例えば、「テレビを見たいから見る」「ゲームをしたいからする」といったように、自分のやりたいようにやることが自分を愛するということでしょうか。違いますね。これらは自分を甘やかしているだけです。こうした「~したい」を我慢して本当になりたいもののために努力することが自分を愛することだと思いますね。さらに、自分にとって難しいなあ、大変だなあと思うことが目の前に現れた時に「どうせ、僕なんかにできるわけはない」などと自分で自分をあきらめてはいけません。「僕ならきっとできる」と自分に言えることこそ、自分を愛する姿だと思います。

 今回が、今年度最後の会礼となります。一年間、きちんと聴いてくれてありがとう。
※ なお、入退場は、6年生有志の素敵な合奏でした。トップページに動画を掲載しておきます。