校長室から

令和2年度学校経営構想(案)について

2019年11月25日 17時25分
教師向けの話

 来年度の教育課程編成作業を行うにあたり、先日、校長として「どんな学校を目指していくのか」といった学校経営構想の概要を、全職員に説明を行いました。それが、以下の通りです。
 細かな文言修正等は、今後多くの方々のご意見をお聞きしながら随時行っていこうと考えていますが、ホームページ上に公開することで、大まかな考え方について地域や保護者の方々にご理解をいただくとともに、ご意見などあれば直接、校長までご連絡いただければと思います。なお、今後はここに示された学校教育目標を具現化するための方策を全職員の知恵を絞って検討していく予定です。よろしくお願いします。



1 はじめに
(1) 校訓に込められた思い
 校訓「誠実」は、本校教育の歴史を貫く最高理念として位置づけられ、本校創立当時の理念や意気を反映しており、建学以来、連綿と受け継がれてきた。
「誠実」には「まじめで嘘をいわない」「そのものに心を打ち込み、没頭してやり抜く姿」「気力が充実して、言行が一致している」といった向笠に集うものすべての基盤となる人間性を示している。今後も、この校訓に込められた先達の思い・地域の願いを受け継いで、学校経営を展開していく。
(2) 本校児童の強みを伸ばす
 概して、子どもたちは「やってみたい」「挑戦したい」というまっすぐな思いをもって教育活動に取り組む。これは、紛れもなく本校の子どもたちの良さであり、今後さらに伸長すべく指導・支援に努めねばならない。
(3) 小規模を強みにした学校経営
 本校の児童数は、今後も140名から150名程度を推移すると思われ、市内でも小規模校の部類に含まれる。この小規模であるという環境を、本校の持つ強みととらえ、学校経営を展開していきたい。

2 学校教育目標「瞳を輝かせ 最後までやり遂げる子(仮)」
 校訓が学校創立当時から続く恒久的な理念だとすれば、学校教育目標は短期的な目標と言える。本校では、平成23年度から学校教育目標を「瞳 輝く子」とし、子どもの姿で、学校教育の目標を示している。「瞳 輝く子」に寄せられた思いとは、個が尊重される教育活動を基盤とし、主体的に学習し、生き生きと生活している姿を理想としてきた。
 本年度は、これまで目指してきた子ども像をさらに進化させた形で、学校教育目標を「瞳を輝かせ 最後までやり遂げる子(仮)」と設定した。
(1) 瞳を輝かせ
ア 自主:自らを進んで伸ばそうとする。目の前の課題を自分の力で解決するために、分かりたい、できるようになりたいという気持ちを持つことや、「分からない」「○○をやりたい」ということを意思表示しようとする態度を育てる。
イ 自治:友達の個性や価値に気づき、ともにそれぞれの価値を磨きあい高めあおうとする。子どもたち自身がより良い学級、より良い学校を作っていこうとする態度を育てる。
ウ 貢献:ふるさとである向笠の地を愛し、自らを取り巻く社会や環境をより良くしていこうと自ら行動を起こす。
(2) 最後までやり遂げる子
どんなに難しいことがあっても逃げずに乗り越えることができ、自分の人生を楽しく充実したものとして創造することができる「たくましさ」を育てていきたいと考える。具体的には、「できるようになりたい」という思いを持ち続け、根気強く取り組む姿に加えて、周りの人(同学年のみならず様々な年齢の人々)とのつながりやかかわりを深め、一緒に課題を解決しようという態度も含んでいる。
以下に、この言葉を新たに学校教育目標として設定した理由について述べる。
ア 子どもたちの成長から
上述のとおり、「やってみたい」「挑戦したい」というまっすぐな思いをもって教育活動に取り組むところは、本校の子どもたちの良さであり、これまでの学校経営上の一つの成果であるとも言える。しかし、ともすると失敗を恐れ周囲に合わせようとしたり、教師に頼ってしまおうとしたりする姿も見られる。今後は、「やってみたい」と思ったことを、友達と協力しながら最後までやり遂げようという強い気持ちを育てていく段階に入ったと考える。
イ 本校の教育課題から
磐周小学校教育活動検討委員会答申(平成30年6月7日)において、「課題設定に主体的に関わったり試行錯誤を繰り返して追究したりする過程を忌避して、安直に結果を求めがちな児童も少なくない。(中略)昼休みは学校行事や委員会活動、放課後は課外活動、帰宅すれば塾や習いごとというパターンを解消して、じっくりと学習に取り組める環境を整えねばならない。」と述べられている。
このことは、本校の教育課程を見直す上においても重要な視点であり、行事や日課表等を見直す中で、子どもも教師もじっくり取り組める環境づくりを進める必要がある。じっくり取り組める環境を整えたうえで、子どもたち自身の「やりたい」を引き出し、そのことをやり遂げようというたくましい心を育てていかねばならない。
ウ 磐田市の目指す姿から
磐田市教育委員会は、磐田市の教育について、大きな変動が予想される未来に立ち向かっていける「たくましい磐田人(いわたびと)」を育成するために、家庭・地域・学校が連携し、地域総ぐるみで子育てに取り組んでいくと述べている。本校も、磐田市の教育の目指す方向性と歩みを同じにしていかねばならない。

3 学校経営目標 「夢を語ろう そして 一歩前へ(仮)」
(1) 向笠スピリッツ 「すべての子どもの笑顔のために」
向笠小の教職員として、「何のために仕事をしているのか」といった明確なビジョンを持っておきたい。私たちは、子どものために仕事をしているのである。あえて「すべての」という言葉を入れたのは、一人の子どもも一人ぼっちにしないという強い思いの表れである。
子どもたちは「やりたい」を見つけ、幾つもの課題を乗り越え、見事やり遂げたとき、きっと充実感と達成感で満ちた笑顔を見せてくれることだろう。そのような最高の笑顔のために向笠小の教職員は家庭や地域と連携しながら邁進する。
(2) 経営の基盤を支えるもの
向笠小の教職員が向笠の教育を推進する上で、いつも大切にしたい「経営の基盤を支えるもの」を以下の3点にまとめた。
ア 「いのち」を大切に
① 家庭との連携を密に図り、多面的・多角的な視点で子ども理解に努める。子ども理解に完成はなく、時間のかかる地道な作業となる。しかし、本校職員は「時間がないから子ども理解ができない」などと言い訳はしない。深い子ども理解のため、決して妥協は許さない集団であり続けたい。
② 他者とのかかわりやつながりを実感できる機会を多く設定することにより、自己への気づきを促し、自己を適正に評価できるように支援する※。そのため、教師による一斉指導は、笑顔で、冷静に、短時間で終わるよう心掛ける。授業において、意味のある対話(学び合いを意味づける、位置づける、成り立たせる)を意図的に単元の中に組み込んでいく。行事等を作り上げる過程において自然発生的に様々な異学年集団で活動できるよう支援する。小規模校であるが故、小回りが利いて様々な場面において様々な形態の小集団を作りやすいことを生かしたい。
③ 勤務環境改善を図り、教職員の「いのち」も大切にする。教職員が心身ともに健康であることで、子どもたちに笑顔で接することができ、このことが何より高い教育効果を生み出す。
イ 「チーム」として
① 小規模校の良さとして、教職員一人ひとりの個性と能力を発揮しやすいということも挙げられる。学校経営に貢献するために、教職員一人一人が自身の持ち味を生かし、「すべての子ども」のために全力を尽くせる教職員集団でありたい。
② 医療や関係機関との連携、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの積極的な活用により、一人ひとりの子どもにとって最適な支援のあり方を常に追求できるよう、チームとして取り組む。 
ウ 地域とともに
① 向笠の地には、新豊院山墳墓群をはじめとする歴史を感じさせる様々な遺跡、桶ヶ谷沼や鶴ヶ池をはじめとする様々な自然、米やそばをはじめとする様々な農作物、何より本校には先達が整備したビオトープなど、他には類を見ない優れた教育素材が多く存在している。そこで、子どもたち自身がふるさとである向笠の地を愛する心が持てるよう、向笠の自然や地理的条件を生かした教育活動を意図的に創造していく。
② 現在も、本校では地域の方々の支援を受け、全学年で地域の作物を栽培し、加工して食べる「地産地消」の活動を推進している。こうした食農学習は向笠ならではの特色ある活動であるので、今後も積極的に推進していく必要がある。
③ 向笠小の学区は広く、中には土砂災害警戒区域に指定されている箇所もある。さらに交通安全上の課題を抱える箇所もある。しかし、そうした課題だけでなく、地域の見守りボランティアの方々が積極的に活動してくれているという強みもある。そこで、そうした地域の方々との連携を密に図り、防犯や事故ゼロに努めていく。
(3) 学校経営目標「夢を語ろう そして一歩前へ(仮)」に込めた思い
ア 夢を語ろう
子どもの「やりたい」を引き出すために、まず夢を語り合える職員集団でありたい。「できない」ことが先行する議論は閉塞感しか生まれない。授業改善への夢、異学年交流を充実する特別活動への夢、市内水泳大会や陸上大会が終了しても子どもたちの体力の維持向上にかける夢・・など、子どもの成長を肌で感じることができる教職員ほど、次から次へと夢は尽きないものである。
夢を実現するためには、幾つもの課題を解決する過程が必要である。ぜひ、夢を語り合い、ともに課題を解決する教職員集団でありたい。
イ 一歩前へ
① 教師としての技量を「一歩前へ」
 「OECD国際教員指導環境調査2018」によると、日本の小中学校教員は概して「児童生徒に勉強ができると自信を持たせる」「勉強にあまり関心を示さない児童生徒に動機づけをすることができる」「児童生徒が学習の価値を見出せるよう手助けできる」など高い自己効力感をもつ割合が他国に比べ低い傾向にあると述べている。
 一年間、向笠小に集う教職員がお互いに切磋琢磨する中で、「授業力が上がった」「子どもたちのやりたいを引き出すことができた」など、教師としての自信をもてるようにしたい。
② 子どもの姿で「一歩前へ」
教育の成果は子どもの姿で語られるべきである。子ども自ら「やりたい」を見つけ、それを子どもたち自身で多様な同学年・異学年交流の機会の中で試行錯誤しながらやり遂げる姿を多く見られるようにしたい。そのような姿が多く見られた時、学校として「一歩前へ」進んだと言えよう。

2020年度向笠小グランドデザイン(案).pdf