権現山は、向笠小の運動場からつながっている標高60mほどの里山です。昭和の終わりに、山の北半分をけずって今の向笠小の運動場と校舎が建てられました。

権現山の森は、木の生え方で見ると、3つの部分からできています。
- 大昔からもともと生えていた森(照葉樹林)
- 人間がヒノキなどを植林した森(針葉樹林)
- 荒れ地だったところに野鳥などが種を運んで自然が回復してきている森
権現山は樹木の種類が豊富です。ただ、問題もあります。荒れ地で一番初めに大きくなったクロマツが、松食い虫の被害で、どんどん立ちがれているのです。かれた松の切りたおしと、ヒノキの下枝の切り落としを行わないと、山がどんどん荒れてしまいます。
そこで、向笠小の子どもたちが、権現山を里山としてよみがえらせるために立ち上がりました。
※写真は初夏の権現山。白く見える木は、アキグミ。荒れ地だったところが20年をかけて再生した森の部分です。
権現山のびっくり情報
- 権現山は、山ではない?
- 権現山には、ひみつきちがある?
- 権現山は、お墓(はか)である?
- 権現山では、しばかりをしている?
- 権現山には、野鳥がいっぱいいる?
権現山は、山ではない?(地形の話)
権現山は、磐田原台地の東のはしの崖です。実は山ではありません。向笠小の運動場から見上げると、こんもりとした小山のように見えますが、頂上まで登って南側に行くと、台地の上の茶畑に出てしまいます。
下の図を見てください。山ならば、左の図のようになるはずですが、権現山は右の図のようになっているのです。このことは、遠くから向笠小を見ればよく分かります。
権現山には、ひみつきちがある?


権現山の頂上には、向笠小の2年生が、生活科で作っているひみつきちがあります。おうちの人たちも手伝ってくださって、りっぱなひみつきちがいくつもできあがっています。
権現山は、お墓である?(歴史の話)
権現山の頂上にはお墓があります。古墳とよばれている昔の人のお墓です。前方後円墳2基と円墳3基があります。現在までに3基が調査されていて、須恵器(すえき)や大刀(たち)や鉄ぞくなどの武具(ぶぐ)、馬具(ばぐ)、曲玉(まがたま)や管玉(くがたま)などが見つかっています。1号墳と2号墳の主体部は、横穴式木室(よこあなしきもくしつ)というめずらしい作りだったそうです。では、磐田市役所に展示された向笠のお宝を紹介しましょう。
権現山では、しばかりをしている?(森林育成作業の話)
昔話のももたろうで、「おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。」というところがありますね。「しばかり」って何でしょう。おじいさんは、山に何をしに行くのでしょうか?しばは、漢字で書くと2種類あります。芝生の「芝」と人の名字にもある柴田さんの「柴」です。おじいさんがほしかったのは、芝生ではなく、柴なのです。柴刈りに行ったのです。柴とは薪のことです。つまり、おじいさんは、山に薪になる小枝を取りに行ったのです。落ちている枝を拾ったり、鉈(なた)で横枝を切ったりしたのでしょう。電気やガス、石油などの燃料がなかった昔には、山でとれる薪が必要だったのです。そのため、村のみんなで柴刈りに行く山が入会地(いりあいち)として決められていました。みんなで利用して適度に人の手が入った山は里山と呼ばれ、自然のままに放っておいた森よりも植物の種類が豊富で、昆虫などもたくさんいるのです。
権現山は、寺田さんという方の所有地です。向笠小では、地主さんから山を借りて子どもたちの教育のために役立てようということになりました。権現山を里山として復活させるために、活動が始まりました。
5年生が、ヘルメットをかぶりノコギリを手に持って山に入りました。立ち枯れた松を切り倒し、ヒノキの横枝を切ったり、間伐を行ったりしました。「親子で楽しむ向笠自然教室」のみなさんも手伝ってくれました。集めた柴は、ビオトープに積んで柵を作ったり、土器を焼くときの燃料にしたりしました。
おかげで、権現山の森はすっきりと明るくなり、下草がどんどん生えてくるようになりました。夏には、ユリの白い花が山肌を埋めます。また、権現山には新しい観察路も整備されました。PTAの奉仕作業では、権現山の草刈りを行います。刈った草は、ビオトープに積んで腐葉土にします。
子どもたちの感想
私は、今日初めてたくさんの木をノコギリで切りました。前に権現山にひみつきちを作った時は、まだ2年生だったのでノコギリは使えませんでした。なので、つかれたけどとても楽しかったです。
私、森大好き!本当に楽しかった。
YさんやMさんたちといっしょに、木を切ってとても楽しかったです。あせがだらだらと出て、少し苦しい時もあったけど、「せえの、せえの。」と、かけ声と同時に木をおしたり、「わっしょい、わっしょい。」と言いながら、5人ぐらいで力を合わせ、大きい木を運んだりしていました。
なんだか、クラスのみんなが力を合わせたことで、みんながすごく仲良くなった気がしました。わたしは、すごく良かったなと思いました。森林育成作業は楽しいな。また、やりたいな。
大へんな仕事をがんばってやってきました。みんながんばったと思うけど、わたしは、Kさんが一番がんばったと思いました。けど、わたしもがんばりました。Kさんがすごいのは、丸太みたいな木を切っちゃったことです。なんか、みんなの力がKさんの刃に集まったように思いました。
合わさった力のおかげで切れたのかなと思いました。
今日、権現山で森林育成作業をして、のこぎりで木をいっぱい切りたおしました。くさっている木とか枝とかを切りました。とちゅうですごく太い木があってなかなか切れませんでした。ずーっとやっているうちにやっと切りたおしました。太い木を切りたおしたあと、すごくつかれました。長い木や太い木がたいへんでした。がんばって切っていくと、道ができてきて、おくに入ってみると木とかがいっぱいあって、おくが一番たいへんでした。2時間やっているうちに、つかれてくたびれました。
つかれたけど、木をいっぱい切りたおしたのがすごくおもしろかったので、またやりたいです。
道を作っているときにオオルリが鳴いていて、少しつかれがとれました。オオルリは見えなかったけれど、きれいな音色がとてもすてきでした。先生によると、「色は真っ青で黒が少しまじっていて、おなかは白」だそうです。
新しい道をなんと2つ作りました。最初、がけの方に行ってみました。そこは、木がいっぱいで、草がたくさん生えていました。おくへおくへと進みました。最後に景色のいい場所にたどり着いたので見てみたら、学校の横にある神社がすごく後ろにあったので、「すごく遠くに来たんだなぁ。」と思いました。
今日は楽しかったけれど、とてもつかれました。
私は、Mさんといっしょにのこぎりで飛び出た枝などを切りました。とちゅうから、NHKの人が2年生が作ったひみつきちを取材に来ました。(私達も2年生の時に作ったから、うつして~)と思いました。私は、(いいなあ)と思いながら、また木を切り出しました。(もう暑いからもどりたい)と何度も思いました。
でも、やっぱり楽しいです。道が完成したことはうれしいです。
権現山には、野鳥がいっぱいいる?
権現山には、野鳥がたくさん見られます。春になると校庭にウグイスのさえずりが響き、初夏にはホトトギス、ホオジロ、オオルリ、冬にはフクロウの鳴き声が聞けます。年間を通してコジュケイ、シジュウカラ、ヤマガラ、メジロ、コゲラ、ハクセキレイなどが見られます。
何と言っても多いのは、ハシボソガラスです。
近くに養豚場があるため、餌が豊富なため増えすぎてしまいました。200羽以上が集まり、学校の農園や花壇、温室にいたずらをすることがあるので困っています。
向笠小の周りは、田園地帯から森林、湖沼まであって野鳥が多く、年間50種類ほどが観察できます。ときどき、野鳥が校舎の窓ガラスにぶつかってきて、気絶したり、死んでしまったりもします。
平成15年9月17日(水)の朝、4年1組は、大さわぎでした。まどガラスに小鳥が当たって飛べなくなってしまったのです。ウグイスでした。声はよく聞きますが、姿を見せることは少ない鳥です。けがをしていなかったので、しばらくすると、自力で飛び立っていきました。
向笠小学校の敷地から声や姿で確認できた野鳥39種
ハシボソガラス、ハシブトガラス、ヒヨドリ、ムクドリ、ハクセキレイ、スズメ、カワラヒワ、ホオジロ、カシラダカ、メジロ、シジュウカラ、ヤマガラ、サンコウチョウ、オオルリ、セッカ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、モズ、ヒバリ、キセキレイ、ツバメ、コシアカツバメ、コゲラ、フクロウ、ホトトギス、キジバト、キジ、コジュケイ、トビ、ケリ、コチドリ、アオサギ、ゴイサギ、コサギ、カルガモ、カワウ、ハヤブサ、アオバズク
コシアカツバメは、名前のとおり腰の部分が赤いのでよく目立ちます。巣は、徳利を縦に半分にして壁の天井にくっつけたような不思議な形です。
写真は、平成14年5月に校舎3階の外壁で子育て中のコシアカツバメ。
ちなみに、チャイムの鳴らない向笠小では、野鳥の鳴き声を校内放送で流して時を知らせています。
例えば、ホトトギスで給食開始などです。